ベルクの最も有名な作品であり、なおかつ最も演奏回数に恵まれた作品である。「ある天使の思い出に Dem Andenken eines Engels」との献辞が付されているが、ときにこれが副題のように看做されることもある。ベルクは初めてこの依嘱を受けた時、歌劇《ルル》に取り組んでおり、しばらく協奏曲は手付かずのままであった。しかし、アルマ・マーラーがヴァルター・グロピウスともうけた娘マノン・グロピウスが、19歳という若さで急死する。ベルクはマノンを可愛がっていたため、この訃報を知ると、オペラをいったん脇にのけ、クラスナーから委嘱されていた協奏曲を「ある天使の想い出に」ささげるものとして作曲にとりかかった。